彼女が目覚めるその日まで

おすすめ★★★★
くまりん
くまりん

難病と闘った感動の実話です。

「キック・アス」「キャリー」「フィフス・ウェイブ」など、アクションからホラー、SFまで各種の映画で主役を演じ、ハリウッドの若手女優の中でも多くの出演作のある役柄の引き出しの多いクロエ・グレース・モレッツが主演した、難病を扱った映画が「彼女が目覚めるその日まで」です。

アメリカの女性ジャーナリストが自分の体験を書いた「脳に棲む魔物」を、原作として作られた実話に基づいた作品で、著者がニューヨーク・ポストの記者として働いていた20代の頃に罹患した、難病の「抗NMDAN受容体脳炎」という病気の発症から、回復までの七か月の闘病記録が再現されています。

日本での公開ではヒット作とは言えない興行成績でしたが、病気を忠実に描いてアメリカでの評価は高く、単に感動するというだけではなく、最先端の現代医学でも解明できない病気があることを理解し、難病とされている病気でもいつか原因が見つかって、治療できることもありうるという希望も持てる映画です。

映画が公開された時は、偶然なのか計画されていたのかはわかりませんが、日本で製作された同じ病気から回復した女性の実話を映画化した「8年越しの花嫁奇跡の実話」も公開されています。

女優のシャーリーズ・セロンが、プロデューサーとして関与していることでも話題になりました。

簡単にストーリーを紹介すると、優秀な記者として、順調に仕事をこなしていたスザンナ・キャハランでしたが、唐突に発症したひどい物忘れによって、仕事に支障をきたすようになり、幻覚・幻聴が始まって体調の悪化が進み始めると、全身がけんれんする激しい発作に襲われるようになります。

病院に入院して検査をしてもデータ上は異常なしということで、医師が精神病を疑い精神科への転院を勧めるものの、両親と恋人による診断に対する抗議によって、さらに検査を進めた結果、世界で217番目の「抗NMDA受容体脳炎」の患者として認定され、症例の少ない未知の病との戦いが始まるという話です。

映画の中での創作ではなく、唐突に発病して症状が悪化の一途を辿って、言葉を交わすことも出来なくなる難病が実際にあることが怖いのですが、どんな病気であっても、家族が信じることは大切なんだと思います。

実際の「抗NMDA受容体脳炎」という病気は、主な症状としては幻覚や幻聴などが出るようになり、精神状態が不安定になることから不自然な体の動きが出て、自分で制御できないのが特徴で、激しくベッドの上で動き回るなど、本人の体の負担も大きく重症化すると亡くなる場合もあるという病気です。

ホラー映画でよくある悪魔が憑りついた状態と、この病気の特徴が一致するので、昔は悪魔憑きとされてエクソシストと闘わされたのは、この病気の人だったと推測されているようです。
日本でも、キツネ憑きとか獣の怨霊が憑りつくと怖いと、昔は言われていましたから、日本においても昔から発症していた人がいたはずだと思われます。

現代の日本においても、病名すら知らない医者も少なくなく、内科から精神科へ脳外科、産婦人科、神経内科などの診療科を、転々とたらい回しされた挙句に、病名が付かずに絶望している患者や家族が日本にも存在いるようですが、病気の100万人当たりの発症率が0.33%ということのようですから、普通に病気を診ている特殊な臨床例のない医師が判断するのは難しいでしょうね。

卵巣に腫瘍があると、腫瘍に対する抗体が出来てそれが、抗NMDA受容体抗体になるために女性患者が85%以上、腫瘍ができやすいとされる平均年齢が26歳と、若い人が発症するとされていますが、卵巣に腫瘍がなくても発症する場合もがあるので、絶対に卵巣腫瘍が原因だと断定はできないみたいです。

感動の押し売りの作品は苦手という人も、健康であるための知識を深めるためという理由でこそ観るというか、そういう理由でこそ観て欲しい映画です。

個人評価:★★★★
公開日:2017年12月16日
上映時間:88分
製作国:アイルランド・アメリカ・カナダ
監督・脚本:ジェラルド・パレット
原作:スザンナ・キャラハン
主演:クロエ・グレース・モレッツ、トーマス・マン
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