日本沈没2020・Netflixオリジナル作品

おすすめ★★★

故・小松左京氏の日本沈没というSF小説が大ヒットして映画化され、さらにテレビドラマ化されて、地震のメカニズムなど全く興味を持っていなかった人たちが、マントルとかフィリピン海プレートなんて単語を交えながら会話を普通に出来るようになったのですから、公開(ドラマが放映)された当時は、半端ないブームだったということだったわけです。

 

なんでもかんでも昔は良かった、と言うのは爺臭いので好きではありませんが2006年にリメイクされた、草なぎ剛と柴崎コウ主演の作品の酷さと比較すると、20億円の製作費をかけたと豪語する失敗映画よりも、30年以上前に制作されたドラマの方がはるかにしっかりと作られているのが不思議な感じです。

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五木ひろしが歌ったドラマの主題歌は日本が沈没して、郷土を失っていく人達に対するメッセージ性があって、ドラマの内容に沿って作られた本来の意味の主題歌で共感できるものでした。(今のドラマの主題歌はほとんどが後付けでイメージソングなんて言っていますが、酷い場合はイメージにもなっていない違和感のある曲の場合があります)

 

昭和の時代に製作された「日本沈没」は、沈みゆく最後まで日本に残ることを自ら申し出て、日本と運命を共にする人達の心情を描き日本が沈没することに断腸の念を持ちながらも、自らが日本であることを主張して海外に旅立つ人の姿を描き、強制的に愛国心が云々というバカな政治家よりも余程、真摯に国を愛する気持ちを描いた作品だったというように記憶しています。

と昭和の「日本沈没」を持ち上げた後に「日本沈没2020」の話です。
こちらはアニメ化された作品で、原作者として故・小松左京氏のクレジットはありますが、科学者・救援者目線ではなく被災者目線に置き換えた内容でありNetflixのオリジナル作品と言っても良い内容になっています。

 

主人公も大人ではなく中学3年生の少女に設定されていて、どんな災害が身近におきても友達を犠牲にすることなく強く逞しく生きて行くという、この手の災害映画にあるお約束は守られず、きれいごとのないリアルな話になっているというのが「日本沈没2020」の特徴です。

 

 

他人の親切心を踏みにじる老人や、外国人を差別して見捨てるネトウヨ的な男助けた女性に見返りとして性的関係を求める男など、実際の災害現場で現れるけれど「礼儀正しく親切で、人助けを積極的にする日本人」を、世界に向けて強調したいがために表向きは隠されるリアリティのある描写になっているためいわゆる「日本人性善説」を喧伝したい層には評判の悪い作品です。

 

が、痴漢被害に遭っている女性を見て見ぬフリの会社員や横断歩道で歩行者が待っていても停車しようともしない女性ドライバー(これはマナーの問題ではなく道路交通法違反です。)など、毎日のように法律を守れない日本人の姿を見ている人が大半のはずですからね、共感性を持てる作品だと思います。

 

いつもお勧めするU-NEXTでは観られませんが、Netflixオリジナル配信となるこの作品を観るために一か月だけ契約しても良い作品だと思います。

日本スゴイ!と本気で思っている人は止めた方が良いです。
現実を肯定できない人には無理ですから。
興味を持たれたら予告編だけでも見てみて下さい。

個人評価:★★★
公開日:2020年7月9日 netflix独占配信アニメシリーズ
製作国:日本
原作:小松左京『日本沈没』
監督:湯浅政明
主演:上田麗奈、村中知、佐々木優子
動画配信:Netflix

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