コロナ禍の影響により各地の映画館では席の間を空けて上映するなどの対策をしている関係で観客の動員が望める映画ほど上映時期の延期が続き、ほとんどの新作が上映されない状態が続き、旧作が上映されています。
「一生に一度は、映画館でジブリを」という宣伝文句でスタジオジブリの作品も「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ゲド戦記」の4作品が東宝系の映画館で上映されていて好評のようですね。
確かにヒットした作品で個人的には「千と千尋の神隠し」はスタジオジブリの作品の中で一番好きですが、今の時期に上映するなら「思い出のマーニー」も再上映して欲しかったなと思っています。
興行的にはスタジオジブリの作品としては物足りない成績だったのは、確かなことなんですが、思春期の少女の揺れ動く気持ちを描写しているという意味で宮崎駿監督とは違った感性ではあるものの、他人と上手くなじめない気持ちを丁寧にすくい上げるような優しさが伝わるとても良い映画だと思っています。
女子の思春期というか反抗期というか、小学生の高学年から中学生ぐらいまでの心理状態を実感できるのか?と問われたら、私は女子ではないので完全には理解することは難しいのですが、それでも自分自身が好きになれなくて、本当に思っていることとは裏腹なことをしてしまって、親や周囲の大人たちに指摘されることもなく自分自身が一番後悔しているけれど、そのことに対して何か言われることがまた心の中で棘になって突き刺さるということで、自分が嫌になってしまうような経験は女子に限らずとも、いわゆる反抗期という自分では制御できない感情が湧き上がる経験は多くの人が共感できると思います。
北海道の瑞々しい緑が広がる夏の風景、死の恐怖を感じてしまうぐらいの突然の雷鳴と大雨の質感、そしてジブリアニメで不可欠な美味しそうな料理の数々そんな映像の中で誰よりも大切で大好きな存在に出会い、その出会いによって自分自身の存在がいかに多くの愛情によって守られ、大切にされ育まれているのかということに気付いた12歳の少女、杏奈のひと夏の貴重な経験を描いたこの映画はもっと多くの人に観てもらうべき映画だと思います。
映画の中に織り込まれた一つ一つのキーワードを順に繋ぎ合わせて行くことでマーニーの正体は誰もがわかってしまいますが、それによって映画自体の魅力が減じられることは無く、ラストの10分間ほどでは、とても温かい気持ちで映画に入り込める作品です。
重箱の隅をつついて悦に入るタイプの人には絶対に向かない作品と思いますが先祖のこと、亡くなった肉親との思い出を家族で共有する、お盆の時期にこそ観て欲しい映画だと思いますので映画館では上映されていませんが、動画配信サイトなどで検索して観てみて下さい。
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