ソン・ガンホさんがカンヌ映画祭で男優賞受賞

シネマクラブ

第75回カンヌ国際映画祭の授賞式が、フランスのカンヌで開催され、日本人の
是枝裕和監督が、韓国映画として演出した「ベイビー・ブローカー」が最高峰
のコンペティション部門で、主演したソン・ガンホさんが韓国人として初めて
個人賞の男優賞を受賞しました。

2019年に「パラサイト」が、作品賞に相当するパルムドールを受賞した際も
主演していましたが、男優賞は獲得に至らなかったため今回が初めてです。


左:是枝弘和監督、中央:ソン・ガンホ、右:カン・ドンウォン

是枝裕和監督はパルムドール(作品賞)、監督賞の受賞は逃したものの取材に
対して「今回のガンホさんの受賞は、この作品にとって最高のゴール。自分の
こと以上に嬉しかった」とコメントを発表し、撮影中に脚本の中でガンホさん
が果たした役割についても賞賛のコメントが出されていました。

個人的に、ソン・ガンホさんの存在を知ったのは「シュリ」でした。
北朝鮮の女性スパイと恋に落ち(スパイであることは知らない)大統領警護の
極秘情報を流してしまい、特殊爆薬を強奪された上、北朝鮮工作員との銃撃戦
を戦った末に、恋人だった女性を射殺するという心が痛い映画でした。
主役はハン・ソッキュでしたけどね。

ソン・ガンホ、ハン・ソッキュ、キム・ユンジン、チェ・ミンシクとその後の
韓国映画界の大御所的存在の俳優が出演していた映画で、日本でもヒットして
韓国映画の評価が急激に上昇するきっかけになりました。

銀行員が仕事が終わった後はプロレスラーとして活躍する「反則王」や弁護士
日本統治時代の日本警察に独立運動団体の監視を命じられた密偵など、数々の
役柄をこなす俳優として、韓国内で重用されています。

カンヌ国際映画祭やアカデミー賞を受賞した「パラサイト」が代表作とされて
いますが、5月18日の光州事件を取材するために韓国に来た、ドイツ人記者を
ソウルから光州までタクシーに乗せて世界に興収騒乱の実態を発信することに
貢献した実在の人物をモデルにした「タクシー運転手」の方が、ソン・ガンホ
さんの人物的な魅力や演技力を観て、自由を規制されることの怖さ、権力者が
国民を敵だと言い出したらロクなことにならないことがよくわかる映画です。

今回は監督賞も「別れる決心」のパク・チャヌク監督が受賞していて、韓国の
映画製作レベルが国際的に評価されている事実が証明された形になります。

是枝裕和監督は映画化したい題材を韓国資本を得ることで具体化し、韓国人の
俳優を演出することで具現化して国際的な大きな受賞に繋げました。

次回作は、英語圏で作品を作りたいと話していますが、そうなる要因の一つが
日本の映画界の凋落であり、カンヌ映画祭で過去にパルムドールや審査員賞を
受賞している国際的な知名度のある監督が作りたい作品があっても資金を出す
こともなく、大手芸能事務所に所属する演技力も期待できないアイドルや親の
七光りで知名度だけはあるモデルを主演にして、内容が薄く海外のマーケット
では相手にもされない作品を自転車操業のように作り続けている日本の映画界
に見切りを付けたということだと思います。

海外に通用するコンテンツが「ゴジラ」「ウルトラマン」「ポケモン」などの
限定的なキャラクターだけでは、そりゃ面白くもないし、投資先としての魅力
にも欠けますから、製作費はジリ貧になり、才能のあるクリエイターは韓国や
中国、ハリウッドに流出していくのを止められる状況にはありません。

日本には「アニメ」があると言う人もいますが、アニメ映画のエンドロールを
全部見たら、アニメーターなどのスタッフの名前は大半が中国か韓国の人だと
いうことは理解できると思いますので、現在のアニメ映画の監督の次の世代は
中国や韓国のクリエイターが力を発揮することになるでしょう。

CGのレベルもすでに韓国や中国の方が精彩で、緻密な映像を作り出しています
から日本映画に太刀打ちできるものは現時点でありません。
今回のカンヌ国際映画祭の結果は、そんな韓国映画と日本映画の状況を如実に
表しているものであり、日本で実力のあるクリエイターの海外への流出を促進
することはあっても、日本の映画会社の枠組みにこだわって自らの才能を死蔵
させようなんて人はいなくなっていくんだろうなと思いました。

現時点で名監督とされている高齢の監督が映画の世界を去った時が日本映画の
終わりの時だと思いますし、いまだに女性スタッフや女優に自分の映画に関係
したいのなら性的な要求を承諾しろと言っているような映画監督を斬り捨てる
ことも出来ない映画界は滅びてしまえば良いと思っています。

 

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