最近は特にウナギに限らず、天然モノ・養殖モノに関する食材の話は、テレビ番組でもよく話題に上るテーマの一つです。
このような番組では、ほぼ100%の割合で美味しいのは「やはり天然モノ」という結論になるのですが、本当にそうなのでしょうか?
なんて、そんな意地悪なことは考えたことはありませんか。
ウナギは、現在のところ完全養殖には成功していない水産資源の一つで、食材としてではなく生物として見ると、絶滅危惧種に指定されている魚類で、まだまだ真実の生態は神秘のベールに包まれているという状況です。
大学や水産資源研究施設での研究レベルでは、採卵から孵化までの一連の繁殖に成功したという話はありますが、あくまでも孵化したという話であって実用レベルではありませんので、養殖の出来ない魚です。
養殖にあたって一番大きな問題点として挙げられるのが、成熟卵を入手するということが出来ないということで、「卵」がなければ当然、孵化・育成までは出来ませんから、現在までに解明されているレベルでは無理なんです。
現時点の推測では、ウナギの産卵場所は世界最深の海底とされているマリアナ海溝とか、フィリピン海溝などの深海説が有力で、日本や韓国、中国の河川を出発したメスウナギは、お腹の中で卵を成熟させながら、遠く離れた産卵場へと向かうと推測されています。
ですから、日本近海で捕獲したウナギから成熟した卵を採卵することは不可能なので、自然に孵化した稚魚(シラスウナギ)を捕獲して育成する形式になり養殖ではなく飼養・畜養という表現が正しいですね。
一般に養殖ウナギは、脂肪が強く、皮が薄いと言われています。
見た目で比べると、天然モノよりも色素が薄く、背中側は黒よりは灰色であり、お腹側は真っ白(天然は黄色っぽい)なのが外見の違いです。
天然モノが成熟するまでには、冬眠を挟むこともありますので数年間の歳月が必要となりますし、過酷な自然と対峙しているため、身を守る意味からも皮が厚くなり、余分な脂肪がつく余裕はありません。
さて、この皮の厚い天然モノと皮の薄い養殖モノでは、どちらのタイプを多くの人が美味しいと感じるのでしょうか?
ウナギ屋さんの意見などを聞いた限りでは、一昔前の人はともかくとして現代の人は、天然ウナギの皮は噛み切れないレベルなんだそうで、ゴムのようなと形容されることが多いみたいです。
天然モノの入手は難しいので、名店と呼ばれるウナギ屋さんでも養殖ウナギを使うのが当然、というか、法律的に見れば絶滅危惧種とされる生き物を料理して食べることは厳密には法律違反ですから、養殖ウナギしか出せません。
ただ、老舗のウナギ屋さんが使っているウナギは養殖モノだとは言っても水やエサにこだわって、手間と時間をかけて育成したオーダーメイドのウナギですから、一年中、温度を一定に保って農産物のように育てられた、量販店で販売の冷凍の蒲焼とは大きく違います。
他にも、コイやナマズ、ドジョウなどの川魚の場合は養殖の方が泥臭さがなく、美味しく感じると言われていますので、どんな食材を出されても「これは天然モノですか、凄いですねェ、あっ!美味しいですねェ。」というテレビ番組の味音痴のレポーターの言葉を真に受けてはいけません。
天然の素材を、確実な技で料理する料理人ならば、天然の良さを活かした調理で美味しく仕上げられると思いますが、素人が川で釣ってきた川魚をそのまま調理しても美味しくないのは想像がつくと思います。
天然モノが、どんな場合でも美味しいということはありません。
どうしても天然モノが必要と考えるなら、流れの緩やかな川の河口では夏の間は、ウナギを釣ることができますので、釣行することですね。
但し、絶滅危惧種=保護動物なので検挙されるリスクは覚悟して下さい。
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